2014年6月アーカイブ

6月21日早稲田大学人間科学部通信教育課程(eスクール)の教育コーチ研修を担当しました。eスクールでは、メンタを「教育コーチ」と呼んでいます。
いままでの研究成果(冨永ほか 2013,2014)から、eスクールの学習者は教育コーチに対して実質的な学習指導を求めていることがわかりました。たとえば、専門的な内容をわかりやすく教えてほしい、間違いを適確に指摘してほしい、といったことです。
教育コーチは、大学院修士課程を修了した人たちで専門知識はもちろん有しています。しかし、専門的な内容を初学者にわかりやすく説明するためのトレーニングは受けていません。そこで、今回の教育コーチ研修では、「説明力向上セミナー」と題した研修を行うことにしました。

内容は、「専門用語の説明の仕方」と「指示の伝え方」の二つ。

専門用語の説明の仕方では、パラグラフ・ライティングの「定義」の記述パターンを紹介しました。練習問題は、自分の研究分野における専門用語を1つ選び、それについてわかりやすく説明するというものです。読み手はeスクール生、文字数は200~250字程度です。

指示の伝え方では、情報整理の方法、画面上での見やすさのコツを紹介しました。練習問題は、教員からの指示をeスクール生にわかりやすく伝えるというものでした。

各練習問題では、ピア・レスポンスも行いました。各自が書いたものを交換し、内容を検討しました。

このような研修を今後も続けていきたいと考えています。


引用文献
冨永敦子, 杉浦真由美, 向後千春 (2013)eラーニング学習者が求めるメンタ資質とは何か.日本教育工学会第29回全国大会講演論文集,163-166

冨永敦子,杉浦真由美,向後千春(2014)eラーニングメンタ資質が学習達成感に与える影響.日本教育工学会研究報告集,JSET14-1,365-372

今回の大学教育学会大会では、自己表現トレーニングについて報告しました。自己表現トレーニングとは、質問に対して1分間で答えるというスピーチトレーニングです。対象は大学生234人、期間は半期、回数は6回でした。

自己表現トレーニングの手順は以下のとおりです。
  1. 5~6人程度のグループを編成します。
  2. 教員が「今日のテーマ」を提示します。たとえば、「人間科学部って何やっているの?」「自分の希望と違う仕事に回されたらどうしますか?」など、就活に関するテーマが中心です。
  3. テーマについて、グループメンバーそれぞれが1分間で順番にスピーチします。
  4. 教員が自己表現スキルに関する解説を行います。
学期末に自己表現トレーニングに対するアンケートを行いました。質問項目は、自己表現トレーニングの達成度および役立ち度(いずれも5段階評価)、どのような点が良かったのか、改善点は何かを分析しました。その結果、自己表現トレーニングの達成度の平均3.36(SD=.90)、役立ち度は平均4.25(SD=.73)と高評価でした。

また、自由記述をKJ法により分析し、以下の関連図を作成しました。
自己表現トレーニング
この関連図から、1)学生は自己表現トレーニングを「話す練習」「就活の練習」と捉えている、2)自己表現トレーニングの構成要素は「スキル練習」「知識習得」「他者の存在」の3つに整理できる、3)改善点としては、就活以外の「テーマ」もやりたい、もっと踏み込んだ「フィードバック」がほしいなどが挙げられました。

冨永敦子,五十嵐美華,柄本健太郎,向後千春(2014)大学生を対象とした自己表現トレーニングの効果.大学教育学会第36回大会発表要旨集録,pp.110-111